101. 黙る

【受容は黙ること】
 思春期にみられる心の病気への対応として、どんな本にも見られるのは「受容」という言葉。
「そうか」と納得してしまいそうですが、よくよく考えてみると、具体的に何をどうすることなのか分かりにくい。
 私は、「受容」とは「黙る」こと、とお伝えしています。

【受験を控えて】
 Wさんは、中学3年生。体調不良が現れたのは、6月中旬のこと。朝になると、下腹部が痛んだり、むかつきが起こったりして、登校できない日が増え、7月に入ってからはまったく登校できなくなりました。
「受験を控えていますので、早くよくしていただきたいのです。ここのところ元気もありません」母親の言葉は穏やかでしたが、目には焦りがみてとれました。

【何を黙る?】
「何故、何を黙ればいいのですか?」
 私は、「子どもの話を聴くために、すべてを黙ってください」と答えました。
「おはよう」、「お休みなさい」などの挨拶の言葉や、「ごはんよ」、「おふろよ」など気づきを与える言葉は、生活上不可欠ですから例外とします。
 また、子どもの言葉の一部を、あいづちとして繰り返すこともかまいません。むしろ、子どもにこちらの聴く耳の大きさが伝わるので、積極的に繰り返します。

【質問には?】
 子どもからの質問には、「分からないわ」、「難しいわね」、「あなたはどう考えるの」などと答えて、決してこちらの価値観は伝えないようにします。
 時には、子どもが苛立って、「『分からない』じゃ、分からない!」と、声を荒立てることもあるかもしれませんが、そうした時は、「ごめんなさい」と謝ります。

【2週間で】
 2週間後、母親だけ来院しました。
「すっかり明るくなり、朝の気持ちの悪さもなくなりました。学校へは行けていませんが、言葉数も増えて、見違えるほど元気になりました」

【十分な成果】
 心がらみの問題は、とかく時間がかかると思われがちですが、それは親が心を変えるのが難しいから。Wさんの母親は、わずか2週間でしたが、それなりに黙ることに挑戦し、十分すぎる成果を挙げたのでした。
 次回は「成果の見方」


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