100. 先回り

【子育てと先回り】
 子育ての基本は、極端な言い方をすれば、先回りすること。
 子どもが間違った道を歩まぬように、子どもの行動の一歩先をみつつ、ことの善悪を教え、ことの是非を教える。
 ただし、これはあくまで幼い子どもを育てる間の理屈。子どもが成長すれば、それにあわせて、子育て法も変化しなくてはなりません。
 思春期に入る頃からの子育てのポイントは、逆に、先回りしないこと。

【こんな先回りも】
 ある日、メールが届きました。小学校6年生の娘さんが、学校へ行き渋り始めたので、私の思春期外来を受診したいが、一般外来でまず子どもの様子を観察してもらい、必要なら専門外来を受診したい、というもの。
 ちょうど足に湿疹ができているので、まず、皮膚の病気として診察してもらいたい、と追記されていました。
 直接、思春期外来の予約をとっていただくように返信しました。

【きちんとした子】
 来院したTさんは、きちんとしたお嬢さんでした。母親が沢山のかかわり(先回り)をもって育てたことが、その態度や言葉遣いから窺い知れました。
「ここの所、ほとんど学校へ行けません。どうしたらよろしいのでしょうか」
 母親が子どもの話を聴くことの効能についてお伝えした後、子どもの先回りをしないことの重要性についても、お話しました。
 先回りとは、子供のためを思って行うすべての言動や行動。その先回りを止めることが、実は、「聴く」ことと並ぶくらい、思春期病に対する有効な手段。

【先回りしない理由】
 何故?
 第一は、子どもが何かに頑張っている時、親が、ああしたら、こうしたらと、先回り介入すると、せっかくの頑張りの成果が、介入した親のものとなり、子どもの達成感を失わせるから。
 第二は、親が先回りをした時、子どもに伝わるのは、親の意向にかかわらず、親のもつ不信の心。信じてもらえない子どもは、信頼に足る行動も自立もできません。
 思春期病の本体は、心のエネルギーの不足。聴くこと、先回りをしないことで、Tさんは快方に向かいました。次回は「黙る」


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