99. 日々の対応

【具体的方法】
 思春期の子どもたちの問題を解決する一つの方法として、親が「黙る、聴く、先回りしない」ことの有用性をお伝えしていますが、今回は、その具体的な方法について。

【頻繁な手洗い】
 M君は小学4年生。小学校受験をして、私立小に通っていました。
 変調が現れたのは、4年生になって間もなくのこと。頻繁に手を洗うようになり、何かというと、母親に食ってかかるようになった、と来院しました。
「最近は、私の言うことをまったく聞きません。何が問題なのでしょうか?」母親は困り果てた表情でした。
「色々なストレスがたまり過ぎた時に見られる症状に似ていますね」
「どうすればよいのでしょうか?」

【聴く方法】
 ストレス発散の方法としてお伝えしたのは、母親が子どもの話を聴く方法。子どもの言葉の一部を、あいづちとして繰り返すほかは、何も話さず聴くことに徹します。
「おかあさん、どうしたらいい?」などいう質問にも、「あなたはどう思うの?」「難しい問題ね」程度にして、こちらの考えは決して話しません。
 いつも答えをもらっていた子どもは、「それじゃ分からない」といらだつこともありますが、そんな時は、ごめんなさい、と謝ります。

【やがて】
 初めのうち、不快そうな、あるいは怪訝そうな態度をとる子どもも、やがて口数は増えて、それまで、いかに母親が子どもの話を遮断していたかに気づきます。
 1ヵ月後、「口数も増えて、本当に穏やかに、明るくなりました。手もあまり洗わなくなりました」母親の顔は明るく、M君の表情も柔らかくみえました。

【こんなに早く】
「こんなに早くよくなるとは思いませんでした」
 それは、母親が短期間で、M君の話を黙って聴けるようになった証。
子どもが、心に持ちきれない事柄を、言葉というボールにつめて投げてきたとき、母親が、それを黙って受け止め、聴くことができれば、それだけで、子どもの心は軽くなるという理屈。
「・・すれば大丈夫よ」などと、母親の価値観をつめて投げ返しては、子どもの心はかえって重たくなってしまいます。
次回は「先回り」

「東葛まいにち」掲載記事より
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