94. 第六感

【当たり前な第六感】
 第六感は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚につぐ六番目の感覚。五感のようにはっきりと意識できないために、特殊な感覚とみられがちですが、本当は、ごく当たり前で、自然な感覚?

【選択的緘黙】
 Yさんが、始めて私の外来を受診されたのは、もう3年も前のこと。Yさんが小学校6年生の時でした。
「家では普通に話をしているのですが、最近、学校でまったく口をきかなくなってしまい、担任の先生から、病院へ行くようにいわれて参ました」と母親。
 これは、選択的緘黙(かんもく)といわれ、特定の環境でだけ話ができなくなってしまう迷路というか、病気。
 私の外来でも、口をきくことはありませんでした。

【音のない世界】
 人の行動にはかならず理由があるもの、口をきかないというのもひとつの行動、きっと理由はあるはずですが、親からの情報だけでの推測には限界がありました。
 こちらの質問に対するYさんの答えは、かすかに首を縦か横に振るだけ。尋問じみた質問をするわけにもゆかず、おのずと、音のない世界が流れるだけでした。

【自然な空気】
 それでもYさんは、母親と一緒に、休むことなく来院してくれました。
 こちらの使える有力な道具は、第六感だけ。
 こちらが感じたところを時たま口にする以外、あとは沈黙でしたが、その場の空気が、緊迫することはほとんどありませんでした。
 私が、母親にお勧めしたのは、相も変わらず、黙ること、聴くこと、先回りしないこと、の三つでした。

【やがて】
 沢山の時が流れ、ある時、「ずいぶん元気になったね」と、ふと感じたままを話した時、Yさんは、「ええ」と、はじめての言葉を発しました。
 かといって、そのままとんとん拍子によくなった訳ではなく、何かを手探りするように、少しずつ少しずつ、その態度に力強さが加わってゆきました。

【未知の感覚?】
 第六感は、味覚を除く四感と過去の記憶を総動員して得られ感覚である気もしますが、人のオーラを感じる能力や、皮膚で光を感じる能力などと同じ未知なる感覚かもしれません。
 次回は、「社会性」

「東葛まいにち」掲載記事より
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