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【自分の問題】 思春期の子どもたちが陥る心身の不調は、まるで迷路のように、あせればあせるほど深みにはまる、という特徴をもっています。 背景にあるのは、自立しきれていない心。自らの問題を、自らで解決できないための深みとも言えます。 それまで、多くの問題が、親や先生の介入によって、処理、解決されてきた経緯があるので、問題に直面しても、それを自分の問題と、なかなか認識しにくいのです。 【毎朝の腹痛】 K君は、中学校1年生。朝、激しい腹痛が起こった、と母親に連れられて来院しました。 「最近、朝になると、似たような痛みを訴え、学校をよく休みます。昨日も、近くの病院で検査を受けましたが、異常はありませんでした。どこが悪いのでしょうか?」と母親は心配そう。 診察時には、腹痛は治まっていましたが、左下腹部に便の塊を触れたため、浣腸液を処方して経過観察としました。 【何の病気?】 その日の午後、K君は、母親と再び来院しました。 帰宅後、またお腹が痛くなり、浣腸で一旦はよくなったものの、夕方になって、右下腹部に痛みが起こり始めた、ということでした。 「吐き気もするというのですが、盲腸の可能性はありませんか?」 念のため、血液検査をしてみましたが、感染症を思わせる所見は、まったくありませんでした。 【任せてみれば?】 母親から、少し詳しくお話を伺いました。一人っ子であること、2年前から父親は単身赴任で留守なこと、子どもの体調が心配で仕方ないことなどを話してくれました。 「腹痛については、病院とK君に任せてみてはどうですか?」 「といいますと?」 「お腹が痛いとき、病院へ行くか、学校へ行くか、家にいるのか、その選択をすべてK君に任せて、こちらからは忠告、提案、命令など一切しないのです」 【任せた結果】 そんなことで本当に治るのか、と母親は訝しげでしたが、1週間後の受診日には、腹痛は治っていました。 「3日間欠席した後、ちょっと痛いけど行く、と登校を始めました」 K君の目には、活気さえ感じられました。 次回は、「聞き上手」 |