90. 0からの出発

【心身の悪循環】
 思春期のストレス病。そのこわいところは、ストレッサー(ストレスの原因)が何であるのか、自覚しにくいこと。
 心身の不調が前面に現れて、思い通りに行動できない自分に悩み、その悩みが、さらに心身の不調を悪化させるという悪循環に陥ります。
 悪循環の結果としてみられるのは、気力や意欲という心のエネルギーの低下。

【過剰反応をしない心】
 5月の連休明けから、腹痛のために、登校できなくなった私立中1年生のM君(前号)。
 予想以上にハイレベルな学校のために、十分な成果を残せない現実と不安、そして「できる子」という親の期待が、大きなストレッサーとなって、M君の心身は身動きがとれない状況に追い込まれていました。復活の道はどう探せばよいのでしょうか?
 ストレッサーを排除することはもちろんですが、失われた心のエネルギーをふくらます算段をして、ストレッサーに過剰な反応をしない心を取り戻すことが大切です。

【0からのスタート】
 心のエネルギーが減った理由は、成果のみえない努力を続けすぎたため。成果のみえる生活を心がければ、心は次第にふくらんでゆきます。
 それには、まず、今の自分を0と考えること。過去の元気だった自分を0としていると、ちょっとした成果があっても、自分をマイナスにしか評価できないからです。
 今を0としておけば、30分早く起きられたことも、わずか10分でも勉強できたことも、皆プラスの成果と評価できるのです。その小さな達成感の積み重ねが、心のエネルギーをふくらまします。

【明るい顔】
 その際、しようと思ってもできないことは、してはいけないこと、と考えるようにします。けっして、自分に甘えがあるとか、自分の努力が足りないとか、考えないことが大切です。
 親は、指示、命令などはいっさいしないで、子どもの自主性を見守る姿勢をとるようにします。
 受診1ヶ月後、M君は、少し明るい顔で来院しました。
「先生、Mが自分から塾に通いたい、と言い、通い始めたのです」と母親。
 そして、夏休み明けからは、登校できるようになりました。
 次回は、「自立」

「東葛まいにち」掲載記事より
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