87. 人間性

【優しさ】
 ヒトが、人間として生きてゆくために必要な特性、それが人間性です。
 人間性の中で大切なものの一つは、優しさ。ヒトひとりひとりが互いに優しければ、ものごとはよりスムーズに進むはず。
 思春期の迷路に迷った子どもたちの多くに共通する特性も、実は、優しさです。

【過保護・過干渉】
 J君は、小学校6年生。不登校になって3ヶ月。来院した母親の最初の言葉は、「最近、何にでも反抗的で、ちょっとしたことでも、暴れます。昨日も、居間の壁を壊しました」でした。
 J君は、とても乱暴とは見えない、大人しそうな子でした。
「私が、過保護、過干渉で育ててしまったからでしょうか?根は優しい子なのですが」
 母親は自省するようにいいましたが、過保護、過干渉は、本当に悪いことでしょうか?

【優しさと親の心】
 子どものために、危険を教え、守り、沢山の知恵を教える。これなくして、子どもにまともな人間性を育てることなどできません。親の姿を見て、親の言葉を聞いて、子どもは育ちます。その間に、親の特性の多くをコピーして、子どもの人間性ができあがります。
 思春期病に迷った子どもたちの多くに共通する優しさは、優しく育てられた証し。
 過保護・過干渉という言葉は、響きは悪いですが、実は、それだけ親の心が子どもに向けられていたことを意味します。
 親の心を感じた分だけ、子どもは優しくなるという理屈。

【よく育っている】
 J君とふたりで、しばらく話をしました。
「お子さんは、十分よく育っていると思います。生きてゆくための道具を沢山持っているようです。あと必要なのは、その道具を自由に使う場だけでしょう」
 過保護・過干渉であったことを後悔する必要はありません。ただ、自立期を迎えた子どもには、自由が必要だということ。そこに気づけば、問題の解決に多くの時間はかかりません。
 わずか1ヶ月後、母親は明るい顔で来院しました。
「先生、Jが本当に優しくなりました、もう暴れたりしません」

 次回は「血液検査」

「東葛まいにち」掲載記事より
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