84. 劣等感

【劣等感の元】
 人が生きてゆく上での願い。生きる目的があること、幸せなこと、心豊かなこと、頭がよいこと、裕福なこと、綺麗なこと、などなど。
 どれも、目標レベルが低ければ、その願いは叶うのですが、つい自他を比較することから、劣等感は生れます。
 思春期は、その劣等感の起こりやすい時期。

【T君の場合】
T君は、有名私立中の1年生。
 変調が現れたのは、6月上旬のこと。朝の目覚めが悪くなり、頭痛を訴えて、学校を休みがちになったと来院しました。
「最近は、ほとんど勉強をしませんし、勉強の話をしても、怒りだす始末です」と母親。
 小学校での成績は、いつもトップクラスで、勉強も自主的によくやっていましたが、志望中学に入学後まもなくから、勉強時間が短くなり、5月中旬にあった中間テストの結果が散々で、父親に叱られた後からは、やる気をまったく失ってしまった、という話でした。

【思春期の劣等感】
「私は、勉強さえしてくれれば、成績はまあまあでもいいと思っているのですが」と母親。
 思春期の劣等感について、少しお話しました。
子どもは思春期になるまでは、自己中心的で、目先にとらわれがちな生活を送っていますが、思春期に入ると、社会的にも、時間的にも、より大局的にものを見られるようになります。そして、自分の置かれた位置を確かめるように、他との比較を始めるのです。
 しかし、思春期は、まだ、自分なりの価値観(目標レベル)が定まらない時期のこと、しばしば高すぎるレベルを目指すあまり、不要な劣等感に悩むことになります。

【レッテルと現実】
 小学校時代、よい子で勉強のできた子どもの場合、「あなたはよい子」、「あなたはできる子」というような、親あるいは周囲から貼られたレッテルが、現実と合わなくなった時、子どもは悩み、苦しみ、やがて心のエネルギーさえも消耗して、心身の不調を招き、時には不登校の迷路に迷うことさえ珍しいことではありません。
 できることなら、価値観(目標レベル)は、子どもが自由に決められる環境にしておきたいものです。ポイントは、周囲の大人が余分な価値観を口にしないこと。

 次回は「生きる目的」

「東葛まいにち」掲載記事より
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