78. 抑うつ状態


【医者になること】
「うつ病にでもなってしまいそう」
 いやなことが続いたとき、私たちは、こんなことをいいますが、本当にうつ病になることがあるのでしょうか?
 A君は、高校1年生。
 3人兄弟の末っ子で、兄2人は既に医大に進んでいました。
 代々医者の家庭で、幼い頃から、医者になることが、家族の条件のようになっていました。
 A君は、自分に医者は無理だと、何度となく父親に話しましたが、聞き入れられず、兄たちと同じ中学に進学しました。
 中高一貫教育の完全な受験校で、毎日出される課題の量は半端ではなく、毎日夜遅くまで勉強し、さらに週末は、塾通いという日々。


【うつ病?】
 変調が現れたのは、高校に内部受験で進級して間もなくのことでした。
 体がだるく、しばしば頭痛が起こり、授業に集中できなくなり、勉強する気力がなくなりました。
 成績は急激に落ち、それを心配した母親に連れられて、心療内科を受診。抗うつ剤を処方され、3ヶ月ほど服用しましたが、症状はよくなりませんでした。
「一体、どうしたのでしょう。お薬も効かないようですし、怠けなんでしょうか?」来院時の母親は困惑顔でした。
 気持ちが重たい、心楽しいことがない、動く気力が出ない、食欲がない、頭痛がする、寝つきが悪いなど、A君の症状だけを並べれば、うつ病のようですが、抑うつ状態という方が適切。


【自由が特効薬】
 A君の置かれた状況を考えれば、どんなに健康な人でも、似た状態になってしまうでしょう。
 うつ病については、脳内に起った生化学的な異常が解明され、その効果的な治療薬が開発されていますが、原因のある抑うつ状態には、必ずしも有効ではないのです。
 気分的に滅入っているそばに、「怠けているのでしょうか?」と考える母親がいては、治ろうはずもありません。
 両親には、生活のすべてをA君の自由することを提案しました。
 その後、両親との面談に多少の時間を要しましたが、A君の症状は、2ヶ月ほどで、急速に改善してゆきました。
 2ヶ月は、両親の気持ちを変えるための時間。
 次回は、「カウンセリング」

「東葛まいにち」掲載記事より
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