77. 心の読み方


【何を考えているのか分からない】
 皆さんは、人の心が読めたら、どんなに楽だろうか、と考えたことはありませんか?
 R君は、中学校2年生。家庭での粗暴な態度に手を焼いた母親に連れられて、来院しました。
「とにかくすごいのです」と開口一番、母親は言いました。「壁中、穴だらけといってもいいくらいです。昔は、優しい子だったんですが」
 R君は、目をとがらせて腕を組み、何をきいても、一言も答えませんでした。
「先生、いつもこの調子なのです。本当に、何を考えているの分かりません」


【気づいているのに分からない】
「そうですか?」と私。
 確かに口はききませんでしたが、R君はからだ全体で沢山のことを語っていました。
 腕を組んでいるのも、質問を無視するのも、相手に対する拒否を示す姿勢ですし、何よりも、目つきが多くを語っていました。
 この場合、母親は何も感じていない訳ではありません。子どもの心はうすうす分かるのに、自分の価値観と合わないので、目と耳を塞いでいるだけなのです。
 そして、難しい年頃とか、反抗期とかいう、母親に都合のよい言葉を盾に、「何を考えているのか分からない」と主張しているのです。


【心の読み方】
 相手の心を読む一つの方法は、こちらが相手に対して、どんな風に感じているのか、を考えてみることです。
 R君の場合でしたら、母親は、その態度を見て、不快に感じ、苛立ちさえ覚えているはずです。その時、R君も同じ心でいると思えばよい、という訳です。
 ただ、思春期の心の特徴として、その時々で価値観ががらりと変化することがあるので、(この子は、こういう子だから)という先入観をもって感じようとすると、混乱することになります。
 子どもの態度に苛立ちを感じたとき、その苛立ちの背後には、しばしば、親の干渉のしすぎが隠れていることを、母親に伝えました。
「思い当たる点があります」と母親は帰られました。
 その後、1週もたたぬうちに、R君が急に大人しくなった、というメールが入りました。
 次回は、「抑うつ状態」

「東葛まいにち」掲載記事より
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