75. 学校の役割


【学ぶことは楽しいこと】
 新しいことを学んだり、理解したりすることは、とても楽しいことです。ところが、学校の勉強を楽しいと思っているのは、ほんの一部の子。
 どんなに楽しいことも、人からおしつけられた途端、楽しくないことに変わるのでしょうか。


【ふさぎこみの原因】
 A君は、小学校6年生。
 もともと活発だったA君の元気がなくなったのは、父親の叱責がきっかけでした。
 五年生、三学期の通知表を見て、ひどく怒ったのです。
 成績はけっして悪くなかったのですが、性格評価の欄で、積極性、指導性、自発性といった項目に、まったく丸がもらえなかったのです。
 その日から、A君は、ふさぎこむことが多くなり、新学期になっても、学校を休みがちになりました。
 元気のなさを心配した母親は、A君を連れて来院しました。
「一人っ子のため、少し甘やかし過ぎたのでしょうか?」


【小柄な小学生】
 A君は、小柄な小学生で、少しひよわそうに見えましたが、話はしっかりとしていました。
「父の言う通りだと思うのですが、性格を変えるのは、僕には無理です」
 言っていることは、筋が通っています。
「変な質問だけど、私たちは、本当に積極的じゃないといけないのかな?」
「えっ!?」A君はうつむき加減だった顔を上げました。
 たとえば、クラスのみんなが積極的な子だったら、きっと、お互いにぶつかりあうことでしょう。自分をおし出す子と控え目な子がいるから、うまくバランスがとれているのです。


【性格の裏表】
 そして、そのどちらの子が優れているということもありません。
 積極的な子は、しばしば、独善的であったり、聞き下手だったりしますし、消極的な子は、自己主張が弱い分、協調性があり、聞き上手だったりするものなのです。
 A君のもっている性格も、見方を変えれば、けっして悪いものでないことをお話しました。


【不要な枠づけ】
 親にも分かりきれない子どもの性格を、学校が分析して、積極性、指導性などという枠で評価するよりも、それぞれの性格の長短両面を指導する方が、はるかに有益だと思うのです。
 次の受診日、A君はすっかり元気になっていました。
 次回は「パニック障害」

「東葛まいにち」掲載記事より
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