72. 強迫性障害


【頻繁に手を洗う】
 Sさんは、高校1年生。小1でバトミントンをはじめ、中学では県大会で準優勝したほどの腕前。高校も、運動部の推薦枠で入学しました。
 Sさんの様子に変化が起こったのは、夏休み明けのこと。ふさぎこんだ表情で、ため息をつくことが多くなりました。
「寝起きが悪く、よく遅刻をします。『何でもない』と本人は申しますが、いつもつらそうです」母親は、心配そうにSさんに目をやりました。
「関係があるかどうか分かりませんが、何かというと、手を洗います。指先がふやけるほど頻繁に洗うのですが、問題ないのでしょうか?」


【Sさんの話】
 Sさんからもお話を聞きました。
 むかし選手だった父親の勧めでバドミントンをはじめたこと、ほとんど毎日、父親の指導で練習をしていたこと、練習は厳しかったが、上手になる達成感で我慢していたこと、高校に入り、学校での練習量が増えて、かえって調子を崩してしまったこと、などを話してくれました。


【何の病気?】
「何の病気でしょうか?」と母親
「練習過剰症候群に強迫性障害が合併したのではないでしょうか」
 練習過剰症候群は、文字通り、運動練習が過剰なために起こる心身の変調で、慢性的な疲労と、精神的な落ち込みを特徴とします。
 強迫性障害は、頭にこびりついた不安をきっかけに、その不安を解消するための行動を繰り返す病気。たとえば、手が汚れているのではないか、という不安から、手を洗い始めますが、いくら洗っても、汚れている気がして、洗いつづけてしまう。止めたいと思いつつも、汚れへの不安が弱まるまで洗いつづけます。


【どうすれば?】
 外来で目にする強迫性障害の多くは、真面目で几帳面な子どもに、ストレスがかかり過ぎた結果として見られます。背景にあるストレス源を断つことで、特殊な療法を用いなくても回復します。ストレス源としては、親による強制や束縛、学校の厳格な規則、人間関係の軋轢、過重な運動などが挙げられます。
 Sさんの場合、1カ月ほど部活動を中止して、自主練習のみにすることで、手洗い行動は、見違えるほど改善しました。
次回は「練習過剰症候群」

「東葛まいにち」掲載記事より
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