69. 体臭


【嗅覚と記憶】
 人の五感の中で、もっとも記憶と強く結びついているのは、嗅覚であると言われています。
 確かに、ふと嗅いだにおいから、過去の情景を鮮明に思い起こすことがあります。
 そのためか、においもなかなか厄介な存在。


【臭いという思い】
 K君は、高校1年生。一人で来院しました。
「体が臭うんですが、治りませんか?」
 中学校の頃から、自分の体の臭いが気になり始め、学校を休みがちになりました。それでも、我慢して通学していましたが、高校に進級して間もなく、友人の「臭い!」のひとことをきっかけに、不登校に。
「母は、臭くない、と言いますが、やはり、におっていると思います」
 身近で診察しても、K君に強い体臭はありませんでしたが、K君の表情は真剣でした。


【体臭解決法】
「臭わなくなる方法はありませんか?」
 体臭の質と程度は、人種、体質、男女、性周期、年齢、食習慣、皮膚の清潔度などによって異なります。
「皮膚の清潔、汗の管理、便秘の予防などで体臭は軽くなりますが、君の場合、体臭の問題が解決しても、今度は、おならが出やすいとか、他の問題が出てくるかもしれない」と私。
「えっ、どうして分かるんですか?本当は、おならのことでも困っているんです」


【気になる背景】
 それは、似たようなパターンで悩む人が多いから。体臭もおならも、実は、問題の本体ではないからなのです。
 体臭やおならが気になるのは、脳による、社会生活を拒否するサイン。脳は、本人の意欲、気力、あるいは体調のレベルが、社会活動に不適当と判断すると、「こだわり思考」を起こさせて、身動きができないように制御し始めるのです。


【気力と体臭】
 ですから、こだわりをこだわりと意識できずに、「体臭さえなくなれば」と努力したところで、脳は、つぎのこだわりを用意して、気力や体調が回復するまでは、自由な行動を許しません。
 要は、気力を失わせた原因や体調不良の病因を探し出して、対処するのが早道。K君の場合、小学校の頃からの持病である腎臓病が、気力の低下と関係していました。
 詳細は次回、「病気と親」

「東葛まいにち」掲載記事より
homeへ