68. 氷食症


【異食症】
 異食症をご存知でしょうか?石、土、粘土、砂、チョークなど、栄養もないものを食べずにいられなくなる病気。
 氷を食べる氷食症の患者さんは意外に多く、製氷皿一杯くらいの氷を平気で食べてしまいます。
 テレビ、新聞でご紹介したところ、全国から反響がありました。


【コーチの勧め】
 Hさんは、中学2年生のテニス部員。
 小さい頃からテニスを始め、小学校の時には、地区の大会で優勝したほどの腕前。1年生の秋には、レギュラーに抜擢されました。
 そんなHさんの元気がなくなり始めたのは、春休みが終わる頃から。コーチの勧めで来院したのは、5月のことでした。
 体が自由に動かない、少し走ると息が上がる、物事に集中できない、などが主な訴えでした。
「変な話ですが、むやみに氷を食べたがります。どこか悪いのでしょうか?」と、母親は付け加えました。


【運動選手の不定愁訴】
 思春期のスポーツ選手の不定愁訴には、まず鉄欠乏を疑うのが鉄則です。早速、血液検査を行いました。
 1週間後、鉄欠乏性貧血と判明しました。
「持久力の低下も、氷を食べるのも、鉄欠乏性貧血が原因のようですね」
 体の中の鉄は、血液の原料となるばかりでなく、エネルギー作りや、脳の活動を助ける役目もしています。
 エネルギー不足は、持久力低下につながり、脳の活動の低下は、記憶力や集中力の低下、そして異食症の原因となると考えられています。


【鉄剤は3ヶ月】
 鉄剤の投与を開始。
 1ヵ月後、「おかげさまで、すっかりよくなりました。もう氷を欲しがりませんし」と母親。
 鉄欠乏性貧血に対して、鉄剤を投与すると、1ヶ月ほどで、症状はかなりよくなりますが、鉄の不足分を補充するには不十分。Hさんには、さらに3ヶ月ほど、鉄剤をのんでもらいました。


【効果はすぐに】
 秋、大会で入賞したとの知らせを受けました。
 氷食症は、鉄欠乏の初期症状として見られ、鉄欠乏症の早期診断や再発のサインとして利用することができます。
 季節に関係なく氷をよく食べる方は、氷食症を疑い、鉄欠乏の血液検査を受けておくとよいでしょう。
 次回は、「体臭」

「東葛まいにち」掲載記事より
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