61. 体調不良

【増大する情報】
 近年の医療の進歩は目覚しく、急速に増加する医療情報には、しっかりとしたアンテナを立てて置かなくては、と自戒するこの頃です。

【異常のない異常】
 A君は中学2年生、陸上部員。母親と一緒に来院しました。
「最近、疲れた、疲れた、と連発します。顔色も悪く、食欲も元気もありません。近所の病院で検査を受けましたが、異常はない、といわれました」
 思春期の子どもの診療をしているとよく耳にする、体調が悪いのに検査には異常がないという不思議。
 ときたま、「何の検査をされたのですか?」と質問してみますが、検査の内容について、ご家族やご本人は、意外なほど知りません。
 医者から、異常がないと言われると、それ以上の質問がためらわれるのかもしれません。

【HPで見つけたこと】
「異常はないといわれましたが、いつまでたってもAは元気になりません。たまたま先生のホームページを拝見していて、その中で、『貧血のない鉄欠乏症』というのが、Aの症状に似ていると思ったのです」
 母親は、前医の検査データのコピーを持っていました。従来の医療機関では、嫌がられるタイプの母親かもしれません。

【納得のゆく医療】
 しかし、今日、医療は変化しています。説明と同意、根拠に基づいた診断・治療など、医療サイド、患者サイドともに納得のゆく医療を目指し始めています。
「貧血はないようですが、A君は、陸上部の練習をかなり真剣にやっている様子ですし、スポーツによる鉄欠乏症の可能性は否定できませんね」
 血液検査を再度行いました。その結果は、母親の直感通りでした。
貧血のない鉄欠乏症。鉄欠乏性貧血の一歩手前の状態です。3ヶ月間、鉄剤を服用してもらうことにしました。

【お母さんのお手柄】
 1ヵ月後、お二人は明るい顔で来院しました。
「見違えるほど元気になりました。こんなに早くお薬が効くなんて」
「お母さんのお手柄ですよ」
 すべてのケースにこのエピソードが当てはまる訳ではありませんが、納得できるまで諦めなかった母親の姿勢が、よい結果を生んだといえます。
 次回は、
「月経前緊張症候群」

「東葛まいにち」平成13年10月10日号掲載記事より
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