57. 五月病

【風薫る5月】
 木々は新緑に彩られ、陽光は輝き、風薫る五月。
 本来であれば、心地よいはずのこの季節、不思議なことに、調子を崩す人々が増えます。
 4月、入学、入社などで新しい環境に入り、緊張感のうちに過ごすひと月。そして5月、環境にも慣れ、状況が分かるとともに現れる不適応症状。
 朝目覚めにくい、集中できない、気力がわかない、体がだるいなど、とらえどころのない症状が人々を襲います。曰く、五月病。

【ある不登校児】
 M君は、中学校2年生。
 小学校5年生の3学期、風邪で欠席したのをきっかけに不登校に。
 中学校の入学式には列席し、ご両親を喜ばせましたが、翌朝からは、腹痛を訴えて欠席、元の生活に戻ってしまいました。
 当院へ来院されたのは、その年の夏休み。
 当初、登校刺激を与えていたご両親も、不登校について悩み、考えるうち、やがて、本人の自立なしには解決できない迷路、と悟ってゆきました。

【逆戻り】
 2年生となり、始業式から登校を始めたM君。
 逆戻りしないか、というご両親の不安をよそに、M君の登校は続きました。
「やっと、昔のMに戻ったみたいです」と、来院された母親の明るい声。
 ところが、連休明けの朝、吐気、腹痛を訴えて欠席した後、再び登校できなくなりました。
「どうしたら?」
 母親には、元々体調が崩れやすい時期であること、多少の逆戻りはめずしくないこと、親の介入は逆効果となることを伝えました。
「すべて、M君に任せておいてはいがかですか」
 結局、M君は、1週間ほどで、登校を始めました。

【目覚めの季節】
 五月病の背景にあるのは、ストレスと体のバランスの崩れ、自律神経失調。
 自律神経は、私たちの体を毎日、朝には活動に、夜には休息に適するように調節し、1日のリズムを作る神経ですが、1年単位でも似た調節を行います。
 1年を1日に見立てれば、4月、5月は、いわば朝、体の目覚めの季節。自律神経は切り替えに際して、その調節が不安定になるのです。
 そこに加わる、環境の変化に伴うストレス。体や心のバランスが崩れても、何の不思議もありません。
 社会活動の多くは4月にスタートしますが、体と心にとっては、けっして好ましい季節ではないという訳。
 次回は
「風邪後症候群」

「東葛まいにち」平成13年5月9日号掲載記事より
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