52. 思春期挫折症候群

【なぜ?】
「なぜ?」
 思春期の迷路に迷った子どもをもつ親の多くがもつ疑問。
「優しく素直な子でしたのに、最近はとても乱暴になってしまって」
 途方に暮れる母親。

【A君の場合】
 A君の様子がおかしくなりはじめたのは、小学校6年生の5月。
 急に口数が少なくなり、陰鬱な表情でいることが多くなりました。
「どうかしたの?」と聞いても、「なんでもない」と答えるばかり。
 6月に入ってからは、朝の目覚めが悪くなり、腹痛や頭痛を訴えて学校を休みがちになりました。

【くそばばあ】
 休めば休むほど学校へ行きにくくなる、と考えた母親は、朝は必死で起こし、なだめすかしつ登校させるように努力しました。
 しかし、やがてA君は、学校のことを言うだけで目をとがらせ、母親にくってかかり、「うるせい、くそばばあ」と怒鳴る始末。
そして、結局は不登校に。

【暴力の訳】
「てめえらが悪いんだ!」と壁をけって穴をあけたり、意味もなく妹をいじめたりと、日に日に乱暴に。
 そのくせ夜になると、母親と一緒に寝たがり、そのうち、自分が眠るまで何か話をしていて欲しいと、執拗に要求するようになりました。
 不登校、家庭内での暴力、執拗な要求に疲れはてた母親は、「入院させてもらえませんでしょうか?」と、A君を連れて来院しました。
 A君は、これまでに自分が親から受けた暴力への仕返しで、すべては両親が悪いのだ、と主張しました。

【精神病?】
 思春期挫折症候群は、原因不明の体の症状からはじまり、不登校、暴力行為など問題行動に陥る一方で、自己中心的に他人に責任転嫁する特徴をもっています。
 進行すると、無気力となり、さらには、幼児化した行動をとるようになるという、精神科医によって提唱された病気です。
 治療には十分な薬物療法を要するなど、思春期の心の問題としては、より重たいクラスのものと考えられています。

【やはり、治った!】
 A君の場合、特に薬は使いませんでしたが、親が抑圧的な姿勢を止めることで、まず家庭内での暴力行為が減りました。
 両親の過去の暴力に対する執拗な非難は、しばらく続きましたが、100%親の非として認め、謝ることで、鎮まってゆきました。
 表情が明るくなったA君の目には輝きが戻ってきました。
 次回は
「非行」
「東葛まいにち」平成12年12月9日号掲載記事より
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