51. ひきこもり

【他人のエネルギー】
 言葉、視線、態度など、他人(ひと)の放つエネルギーは、時には大変なストレス。その対策の一つは、他人から遠ざかり、独りになること。

【いってみようかな】
 M君は、中学校2年生。
 思春期外来には、お母さん独りでの受診でした。
「申し訳ありません。昨夜までは『僕も、いってみようかな』などとも申していたのですが」
「いえ、結構ですよ。思春期の問題は、お子さんが来院できるものばかりとは限りませんから」
「そう言っていただけると」とお母さんは続けて、M君の経緯を話してくれました。

【優しく素直】
 M君は、優しく素直で、感じやすい性格。
 小学校4年生から中学受験のための塾通いをはじめ、成績は悪くなかったものの、志望校には不合格。
 中学入学後、1学期は元気に通学しましたが、2学期に入って間もなくから、急に元気がなくなりはじめ、朝にいろいろな体調不良を訴えて欠席しがちに。
 10月の運動会に欠席したあとからは、まったく登校しなくなりました。
 はじめのうちは普通だった生活リズムも、徐々に昼夜逆転し、昼頃起きてきて、ごはんを食べて、後は、テレビ、ゲーム、漫画で過ごす毎日。
 表情は暗くもなく、イライラした様子もない。体調はよさそうで、食欲もあるのに、最近は、まったく外出もしなくなった、ということでした。

【きっかけは多種多様】
 ひきこもり。
 きっかけは、いじめ、失敗、暴力、事故、しばしば不明、と多種多様ですが、その根本的原因は、自立できないことではないか、という考え方があります。
 自立できない心の中にあるのは、劣等感と気力の低下という負の要素。その要素を振り払うためには、自ら行動し、自らその成果を評価し、達成感を味わうことが一番の早道。

【知恵あるカタツムリ】
 お母さんには「お子さんを、カタツムリだと思って下さい」と話しました。
 子どもの動きはとかく遅く、その方向もなかなか大人の思い通りという訳にはいきません。
 結果を急ぎたい大人は、「そっちじゃない」と、つい手をだしてしまいがちですが、結果は殻に閉じこもらせることに。
 任せておけば、知恵あるカタツムリは、ゆっくりかもしれませんが、殻から頭を出し、角を出し、動き始めます。
 どこまで口と手を出さずにいられるかがポイント。
次回は
「思春期挫折症候群」

「東葛まいにち」平成12年11月11日号掲載記事より
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