46. 心身症と身心症

【身心症?】
 心が病んで体の症状として現れることを、心身症と言いますが、思春期には、逆に、体が病んで心の症状が現れることがあります。いうなれば、身心症。もちろん、これは私の造語で、正式な病名ではありません。
 思春期の子どもたちの体調不良。病院を受診しても、「疲れからでしょう」、「思春期ですから」、「しばらく様子をみましょう」などと処理されるのが落ち。親に相談しても、「やる気が足りない」、「怠けぐせだろう」、「自覚さえあれば」などと返されては、らちがあきません。
 自分自身でも、体調不良の原因が分からず、人に訴えても取り合ってもらえない。そんなつらさから、精神的に滅入ってしまうのも自然な流れ。

【原因不明の体調不良】
 S子さんは、中学2年生。母親と来院しました。S子さんの表情は暗く、肩も落ちて元気がありませんでした。
「ここの所、まったく元気がありません。食欲もなく、疲れた、疲れたと、学校から帰るとすぐ寝てしまいます。そのくせ、夜になると起き出して、朝は起きれないのです」と母親。
「どこか病院へは?」
「行って検査をしてもらいましたが、どこにも異常はない、と言われました。心の問題ではないか、とも」

【体からのサイン】
 ちょっと時間をとって、S子さんに、思春期の体の特徴と、体調が悪くなる理由、そして、その対応法を説明しました。
「疲れた時は、疲れたでいいし、起きられない時は、起きられないでいいのです。疲れたも、起きられないも、体があなたに送ってきたサイン、大切に考えて下さい」
 翌週、S子さんの姿はありませんでした。
「先生、おかげ様で、翌日から元気に学校へ行きました。どうしたんでしょう?あんなに元気のなかった子が」
 思春期は、ただ成長することが原因で、体調がくずれることが珍しくありません。そのことを、子供たちに知らせておくことは、とても大事なことです。

【心の問題じゃあない】
 身心症の、心身症との違いは、分かってしまえば、その回復が早いことと、心へのケアを、必ずしも要しないことです。逆に、心へのケアの効果は薄く、時には、本人の口から、「心の問題じゃあない」と発せられることもあります。
 本人の言葉に、十分耳を傾けておくことは、ここでも大切なこと。
 次回は、
「不定愁訴」

「東葛まいにち」平成12年6月10日号掲載記事より
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