44. 思春期と栄養

【思春期の食欲】
 思春期の子供たちの食べっぷりには、なかなか小気味いいものがあります。口いっぱいに頬張るさまは、少々下品でも、とてもおいしそうに見えます。
 ところで、思春期の子供たちの旺盛な食欲のもとは何でしょうか?
 それは成長のスパート。骨、筋肉はもちろんのこと、全身を流れる血液の量も増えます。大きくなった体は、それだけ沢山のカロリーを必要とし、体はそれぞれの原料の調達にやっきになるという訳。

【思春期と栄養素】
 先日、喘息でかかりつけのA君のお母さんから、「先生、Aも、もう思春期なんですが、ビタミン剤とか、プロテインとか、カルシウムとか飲ませた方がいいのでしょうか?」という質問を受けました。
 近所の奥さんに、自分の子供に飲ませたらとてもよかったので、と勧められたというのです。
 確かに、蛋白質、鉄分、カルシウム、ビタミンが、思春期に大切な栄養素であることは事実です。ただ、どんな栄養素も、食べ物以外の方法でとることにはちょっと問題があります。
「うちの子は野菜も嫌いですし、何かしておかないといけないのでは」と、お母さんはちょっと悩みぎみ。
「お肉は食べませんか?」
「大好物で、いつも肉、肉と言っています」
「牛乳は飲みませんか?」
「水代わりに飲んでいます」

【和製エスキモー】
 ちょっと、エスキモーの話。彼らは野菜をほとんど食べません。なのに、ちゃんと元気に生活しています。
 どうしてだと思いますか?
 野菜の代わりに、ビタミンAやCは動物の肉、内蔵からとり、食物繊維は動物の乳に含まれる乳糖からとっているのです。A君は、和製エスキモー?

【栄養を補う本能】
 人には、何か栄養素が欠乏すると、その栄養素を含む食べ物が欲しくなるという本能があります。ところが、錠剤などで、ある栄養素を単独に補充しすぎると、不足栄養素を補おうとする本能が邪魔され、かえって栄養上の偏りを招くことになりかねないのです。
「A君は、背も伸びて、元気じゃないですか」
「ええ、とても元気です」
「元気な栄養不足というのは変ですよね。A君の栄養は、彼の食欲に任せても」
「そうですね」
 思春期の子供たちの栄養について、特別の薬や栄養剤は要りません。本人の欲するままにとは言いませんが、できる範囲で、彼らの食欲と嗜好を満たしてあげたいものです。
 次回は、
異食症について。

「東葛まいにち」平成12年4月8日号掲載記事より
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