42. ヒステリー

【キーキー言わないヒステリー】
 ヒステリー。もともとの意味はギリシャ語で「子宮」。子宮の病気と考えられていた時代があったから、とか。
 ヒステリーというと、大人の病気のようですが、小児科でも時たま出会うことがあります。症状は、うまく歩けない、目が見えにくい、声が出ない、など色々。
 どの子にも共通するのは、人前で、そのできない様をみせようとすること。その仕種が一般に大げさなので、うそっぽい、と思われがちですが、私には、「早く誰か助けて」という無言の叫びにも見えるのです。仮病との違いは、本人にその意識がないこと。

【螺旋状視野】
 Sさんは、小学校五年生。
 小学校の身体検査で、視力の低下を指摘され、眼科を受診。目そのものに異常はありませんでしたが、螺旋状視野という特殊な異常が発見され、私どもに紹介されました。
 両親と、中学校一年生の姉、小学校三年生の弟、の5人暮らしでした。
「どこか悪いところでも?」と、お母さん。
「螺旋状視野というのは、心の病気でみられる異常なんですが」と私。
「心の病気といいますと?」
「心につらいことがあるのに、自分で解消も表現もできずにいると、体が『目が見えにくい』などの症状を出して、それを外に伝えようとすることが、、、」
「確かに、この子は口べたで」と、お母さんは私の話をさえぎって、Sさんを振り返りました。Sさんは、あわて目を伏せました。

【Sさんの話したこと】
 一対一でSさんにお話を聞きました。時たま涙ぐみながら、それでもしっかりとした口調で、話してくれました。
 お母さんは、自分だけにつらくあたるというのです。弟が何かしても、悪いのはいつも自分。叩かれるのもいつも自分だけ。お父さんは、昔から姉ばかりを可愛がり、Sさんを怒ることはないけれど、優しくしてくれたこともない、など。

【どうすれば?】
「どうすれば?」と、お母さんは困った様子。
「親は、子供たちに対していつも優しく、平等でいられるとは限りません」
 はっ、とした表情をみせたお母さんは、「思い当たる点が」と帰られました。そして、二週間後、Sさんには、笑顔がもどり、一ヶ月後の眼科の検査では、もう異常はありませんでした。

【想像されること】
 優しくなったお母さんの表情から、何をどうされたのかは、容易に想像がつきました。次回は、
燃え尽き症候群について。

「東葛まいにち」平成12年2月12日号掲載記事より
homeへ