38. 過換気症候群

 息をするから、息ができなくなる?まるで禅問答のような病気が、過換気症候群です。

【息が苦しい女の子】
 Mさんは、中二の女の子。
 朝、病棟をのぞいてみると、Mさんが入院するところでした。
「吸入しましたが、苦しがるので、入院にしました」と当直医。
 診察してみると、喘息発作はほぼ治っていましたが、ハアハアと速い呼吸をしていました。
「苦しそうだけど、少しゆっくり息をしてみようか。入院したんだから、もう安心して大丈夫だよ」
「腕が少ししびれます」
「病気の症状だから、もう少しすれば自然に治るよ」

【過換気?】
 病室から出ると、お母さんから「どうなんでしょうか?」と質問を受けました。
「もう、喘息の方は落ちついて、過換気を起こしているようですね」
「過換気?」
 過換気症候群のしくみをちょっと説明しました。
 過換気とは、ハアハアと速い息をして、肺で酸素と炭酸ガスの交換をしすぎるという意味です。脳にある呼吸中枢は、血中の炭酸ガスが増えると、「呼吸せよ」という命令を出す仕組みになっているので、換気しすぎて炭酸ガスが減りすぎると、呼吸の命令が出せなくなります。
 本人は、もっとハアハア呼吸がしたいのに、呼吸ができず、息苦しさを覚える。これが過換気症候群です。腕のしびれは、炭酸ガスが減りすぎたサイン。

【ペーパーバッグ療法】
 過換気を治す方法として、紙袋が有名です。紙袋で口と鼻をおおい、その中で息をする治療法。いくら、ハアハアと早い呼吸をしても、炭酸ガスの多い吐いた息を、もう一度吸うことになり、血中の炭酸ガスは減らず、息をしたいだけできるというわけです。

【過換気症候群の背景】
 問題なのは、なぜハアハア早い呼吸を始めるか、です。この病気の子供たちは、とても繊細な感性をもっています。自分のつらさをまわりに表現する方法として、無意識に、過換気を起こすようにみえます。過換気で表現しなくてはならないほどに、子供が、自由のきかない立場にあることです。

【やりきれない話】
 子供に喘息などの持病があるときなど、親は、子供を守ろうとする自然な本能から、子供をカバーしようとします。それが結果として、子供を抑えこむことになってしまう。やりきれない話ではあります。
 次回は、
シンナー・ドラッグ

「東葛まいにち」平成11年10月9日号掲載記事より