36. 貧血

【貧血の意味】
 貧血には、三つの意味があります。
「私、貧血起こしちゃった」は、立ちくらみの意味。
「あの子、貧血っぽいわね」は、顔色が悪いこと。
「病院で、貧血がある、と言われたの」は本物の貧血。
 思春期の子供たちには、どの貧血も起こりますから、ちょっと混乱します。
 立ちくらみは、立ち上がったとき、脳にあるべき血液が、重力のために、足の方に偏ってしまうもの。
 顔色が悪いのは、血液自体が少ない(本物の貧血)か、血液量は正常なのに、顔の表面の血管に、十分な血液が循環しないもの。
 本物の貧血は、血液が足りなくて酸素をうまく運べず、体のあちこちが酸欠状態になるもの。ほとんどが鉄不足で起こります。

【顔色が悪い】
 Hさんは、中学校二年生。学校の健康診断で、貧血の疑いがある、といわれて来院しました。
 顔色は、なるほど悪く、目の結膜の色にも赤味がありませんでした。
 「ちょっと階段を上がっただけで、心臓がドキドキするとか、息がきれるとかしますか?」
 「...しません。ただ、とても疲れます」
 血液検査をしました。

【貧血がない】
 「貧血はありませんね。Hさんの血色素値は12.3でした。思春期の女子では11.0以下が貧血ですから」
 「貧血ではないのですか?こんなに顔色が悪いのに」と、お母さんはいぶかし気。
 「顔色の悪いこと自体は、心配いりません。ただ、検査結果をみると、Hさんの体は、多少、鉄が不足しているようですね」
 「でも今、貧血はないと...」

【貧血のない鉄欠乏】
 「はい、鉄不足にも段階があって、体全体の鉄分の30%以上が減ると、エネルギー不足(貧血のない鉄欠乏症)、45%以上減ると、酸欠(鉄欠乏性貧血)の症状がでてきます。鉄が不足して、すぐに貧血というわけではありません」
 体のエネルギー不足は、疲れを、脳のエネルギー不足は、理解力低下、記憶力低下を起こします。
 三ヶ月ほど鉄剤で治療しましたが、「本当に、疲れなくなりました」とHさん。

【貧血スクリーニング】
 思春期は、成長のスパートによって鉄が不足しがちな上に、生理、筋肉の発達、スポーツ、ダイエットと、マイナス因子が目白押し。
 貧血がなくても、鉄欠乏症が隠れているかもしれません。本当は、中高生には、貧血検診をしておく必要があるのです。
 鉄不足は、鉄剤でよくなる病気ですから、体調不良の人は、一度、病院へ行って検査してもらいましょう。
 次回は、
緘黙です。

「東葛まいにち」平成11年7月24日号掲載記事より
homeへ