28. 思春期と無気力

【今どきの若い者】
 古代人の住居跡?洞窟の壁に書かれた文字.解読すると,書かれていたのは,「今どきの若い者は...」
 この「今どきの...」がつながり,つながって現代に至っているのでしょうが,世の中が時代を追って悪くなっているようにはみえません.
 結局のところ,理解できないものは非,とする大人の価値観の連鎖という事.

【二つの無気力】
 ところで,現代っ子は無気力,と言われ始めて久しいものがあります.
 この無気力,大きく二つに分けられます.一つは,やる気を失って始まる無気力,もう一つは,やる気はあるのに体がゆうことをきかない無気力.

【ジベタリアン】
 気力なさげに地べたに座り込む若者の一群,世に言うジベタリアンたちは前者.理解しがたいところもありますが,現代社会への彼らなりの適応反応かもしれず,外見からの批判はできません.それこそ,「今どきの...」になってしまいます.

【マジメな無気力】
 一方,後者は何とかしたいのに何もできない無力感が,次第に子供たちからやる気を奪いとるもの.もともと真面目に育てられ,真面目に暮らしてきた子供たちを襲う無気力.

【突然の変化】
 A君は中学3年生.夏期講習,塾,自宅学習と受験勉強に明け暮れていた彼が,突然勉強を投げ出したのは8月の終り.勉強疲れだろうと思っていた母親は,9月に入り久しぶりに机に向かうA君をみました.しかし,近づいてみると,A君は本もノートも広げずただ涙ぐんでいたといいます.その異様な雰囲気を心配して病院を訪れました.
 A君の成績はいつもトップクラス.進路のことで迷ってはいたが,それほど悩んでいるようには見えなかった,と母親.ご両親とも学校の先生でした.
 彼は,学校へは通っているが,何にも集中できない,何かをしようという気力も湧かない,と訴えました.一通り行なった血液検査には異常はありませんでした.

【急がば回れ】
 このタイプの無気力には,今の心と体は無気力を欲している,と発想する位のほうがよい結果を招くことを伝えました.無気力を克服しようとすると,克服できないストレスがかえって心と体を更なる無気力へと追いやってしまうのです.
 「受験まで時間が...」と焦る母親.焦らせれば焦らせるほど深みにはまるA君.急がば回れ,と母親が彼の無気力を是認する気持ちを固めた頃,A君は回復の兆しを見せ始めました.
次回は
思春期と進路

「東葛まいにち」平成10年11月28日号掲載記事より