17. 家庭内暴力

【金属バット】
 いつの間にか,すっかり社会問題化した家庭内暴力.家庭内暴力のひどさに,父親が子供を殴り殺した事件の裁判など耳に新しいところです.金属バット=家庭内暴力.なぜ,いつも金属バットなのでしょう?

【A君のケース】
 朝,小児科外来.体調が悪く学校を休みがち,というA君14歳のカルテ.不登校か思春期病か,と思いつつお呼びすると,むすくれ顔の男の子と,困惑顔の母親が入ってきました.
  母親とだけ面談してみると,いかに子供のことを心配しているのかを熱心に話した後,不登校もさることながら,家の中での暴力がひどいのに閉口している,と訴えました.出来る限りのことはしているが,子供は全く応じてくれない,とも言いました.

【本当の彼】
 A君と二人になってみると,ところどころで見せる笑顔が本当の彼を暗示してくれるようでした.素直な話しっぷりにも好感がもてました.しかし,話の内容はとんでもない方向に偏っていました.両親がA君にした過去の暴力の数々を,思い出すように披露してくれました.「あいつら(両親)は忘れているかもしれないけど,僕はけっして忘れない」とも言いました.心の未熟性もさることながら,過去,彼の心に映され続けた親の心が,今の家庭内暴力の背景にあることは容易に想像されます.

【分析してみると】
 これまで何度か,不登校は子供の無意識な拒否行動であり,それは,子供自身が拒否され続けた結果である,と書きました.家庭内暴力は,その拒否行動が意識化,表面化したものと言えます.心の底の拒否衝動を持ちこたえるには,彼の心は,未熟で,虚弱すぎたのです.未熟なまま成長せざるをえないほどに,押さえ込まれ続けた結果と考えることもできます.

【子供は常に正しい】
 どう解決するのか.こうした場合,医療サイドのいかなる懐柔策も子供には通じないものです.対策は二つ,時が過ぎるのを待つか,両親が徹底した受け入れ姿勢をとるかの二つです.前者の場合,警察沙汰になることも珍しくありません.後者は,徹底することの難しさに苦しみますが,「いかなる場合も,子供は常に正しい」と思えるところまで,徹底しなくてはなりません.親はつい,何とか更生させなくては,あるいは,支えてやらなくてはと考えがちですが,このような目上の立場からの発想では,問題は解決しないのです.
 次回は,
いじめについて考えます.

「東葛まいにち」平成9年11月22日号掲載記事より
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