16. 激やせ

【なぜ痩せる?】
 拒食症(神経性食思不振症),通称激やせは,思春期病の中ではかなりの大物です.
 この病気の患者さんは,やせ細りはじめても,自分が痩せているとは感じません.痩せても痩せても,痩せたいという願望が消えないのです.激やせは,「命を守れる程度で共存させるしかない」と言われるほど治りにくい病気で,今のところ原因不明.母への憎しみ説,幼児への回帰願望説などありますが,今ひとつピタッときません.激やせはしばしば不登校を合併しますが,これらの説では説明がつかないのです.

【潜在的拒否行動】
 不登校は子供の示す潜在的拒否行動である,と以前ご紹介しましたが,激やせも同じではないか,というのが今回の話です.
 人の心の中に住む二人の自分.自分の意識によってコントロールできる表面の自分と,潜在意識によって支配されるもう一人の奥底の自分.表面の自分はものの道理を理解することができますが,奥底の自分は体験的,感覚的な理解のみが可能な自分です.その奥底の自分に生まれた頑固な拒否姿勢.この心を変貌させる一つの方法として,彼らを徹底的に受け入れることをお薦めしています.子供は常に正しい,と一見ばかげた程に子供を信じようというのです.

【心は鏡】
 人は,いらいらした人の前ではいらいらと,穏やかな人の前では穏やかな気持ちになるもの.この周りの人の心を映しとって自分の心としてしまう無意識の力.この力ゆえに,子供達は発育の過程で親の心を映しとり,親を見れば子が分かる,子を見れば親が分かる,となる訳ですが,この映しとる力が,奥底に潜む自分を変化させるのです.子供は受け入れられて初めて,心に受け入れの心を映し出すことができるのです.

【子供は何でも分かっている】
 受け入れるとは,子供を認め,信じ,自由にさせること.決して叱らない,子供の話をよく聞き,親の考えを押しつけない,高い目線で子供と接しない,などが具体的な方法です.いくつかのテクニックが必要ですが,「子供の勝手にしておいたら,どうなるか分からない」と信じる気のなかった親が,「子供は何でも分かっているんですね.なんであんなに子供を抑えつけていたのか自分でも不思議です」と言うようになる頃,子供はこの難病から立ち直り始めます.他の心の病気にも効果がある方法です.まず,信じてみませんか.
 次回は,
家庭内暴力について.

「東葛まいにち」平成9年10月25日号掲載記事より
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