12. 肥満

【なぜ太る?】
 近ごろの医学の進歩は,とうとう肥満遺伝子まで発見してしまいました.「えっ?じゃあ,ダイエットしても意味ないの?」いえいえ,心配はご無用,遺伝3割というのが専門家の意見.
 ダイエットばやりの今日,テレビ,ラジオ,雑誌と,色々な方法を目や耳にしますが,不思議なのは,そのほとんどがいつの間にか消えてしまうことです.「私,これでこんなにやせました」なんて本まで書いた女性タレントも,しばらくすると,あらあら逆戻り,といった始末です.苦労してやせたはずなのに,なぜ再び太るのでしょうか.太る本当の原因が消えていないからに違いありません.

【肥満児の特徴】
 太った子供は,概して,むさぼるように物を食べます.口の中に何かを詰め込むことで,「満たされない自分」を必死で満たそうとしているかのようです.さりとて,食べ過ぎへの分別がない訳ではなく,分かっていながら止められない.それがまた新しいストレスに,という悪循環.
 簡単に言ってしまえば,肥満はこころの病気.この問題の一番の根っこは,太っている子供の多くが,繊細で敏感であること,ストレスに打たれ弱く,「満たされない自分」が生まれやすいところにあります.

【だめ,だめ,だめ】
 A君は小学校6年生,お母さんに連れられて来院しました.体重は58キロ,身長は145センチ,肥満度は50%肥満で,要注意を超えて,要治療域でした.「食べ過ぎちゃだめ,よく噛まなきゃだめ,運動しなくちゃだめ,と基本的なことは教えているのに,なかなか言うことをきかなくて」とお母さん.どんな子供の病気にも共通しますが,「だめ,だめ,だめ」でうまくいったためしがありません.

【入院治療の意味】
 A君には入院治療をすすめました.1日のカロリー数は徐々に1000カロリーまで落とし,同時に運動療法も行ないました.A君は入院中,とても明るく元気でした.
「お腹すかない?」の問いにも,笑いながら「大丈夫」と答えました.これまであまり好きでなかった運動も積極的にするようになりました.彼にとって,彼を信じ,任せる環境が必要だったのです.1カ月半で5.5キロやせました.
 退院後の最初の診察日,「何もいわないのに,Aは自分で食べる量をコントロールできるようになったんですョ」というお母さんの明るい表情をみて,迷路から抜け出しつつあるA君を感じました.
 次回は,
睡眠障害について.