8. むずかしい思春期

【思春期の二面性】
 思春期を表す言葉に,”難しい”があります.言うことを聞かない,あるいは,彼らの行動をどう理解したらよいかわからない,という意味で使われます.
 言うことを聞かなくなる理由は,前回お話ししたように,彼らの言うことが聞いてもらえない結果なのですが,彼らの行動については,どう理解したらよいでしょうか.
 私は,彼らの中には二人の自分がいると考えながら,思春期の問題に対応しています.
 人間誰しもある程度の二面性はもっていますが,その二面への揺れ動きが極端なのが思春期の特性とも言えるのです.ですから,「あの子はおとなしいから..」とか,「あの子は神経質だから..」という方法で彼らを理解するのには,おのずと限界があります.
 「くそばばあ」とどなりつつ,その一方では「お母さん,お母さん」と平気で甘えてしまえるところが,思春期の不思議で,おもしろいところです.

【下手な介入は大怪我のもと】
 では,そんな思春期の子供たちとどう付き合ってゆけばよいでしょうか.
 揺れ動きが一段落するまで,彼らの表面に出た面をそのまま受け入れておくのが,一番賢いやり方だと思います.介入し,揺れ動きと同調した対応がとれれば,それでもいいのかもしれませんが,多くの場合,同調しきれず衝突し,思春期のさまざまな問題を生むことになります.
 R君は中学2年生,ご両親とも学校の先生で,それまで何の問題もなく成長してきましたが,最近になって,急に家の中で暴力的になってきたというのです.「これまでとても素直でよい子でした.よい子過ぎることを,かえって心配していた位なのに...」と言う母親の横で,R君は腕を組んで顔をそむけていました. 「なにか思い当たる原因でも?」
「まったくありません.これまで自由に育ててきたつもりです.」

【R君の本心】
 R君一人と面談してみると,「うるさいんですヨ.自由にしていたなんてウソです.昔は,それほどでもなかったんですが,最近は特にそう感じるんです.」と静かな口調で答えました.この食い違いが,同調しない介入の結果なのです.
 R君が来院してから1カ月,母親の前で腕を組まなくなった彼.もう少し時間がかかるかなと思いつつ,早く彼の明るく晴ればれとした顔をみたいと願っています.
 次回は,
不登校について.