7. 思春期は反抗期?

【百姓一揆】
 「何にでも反抗して,言うことをきかない」「何を考えているのかわからない」「本当に難しい年頃」と,思春期の子供たちは,余り評判がよくありません.
 その難しい年頃の子供たちを診察していて,いつも思うのは,この子たちは本当に反抗期だろうか?という疑問です.病院の外来を訪れる彼らは,おおかた素直ですし,友達同士でいるときの笑顔など,反抗期という言葉からは想像できないほど明るいのです.
 あるとき,ふと思いつきました.自我が芽生え,自らの独立を望む思春期の子供たちを,かれらの支配者たちが反抗期と呼んでいるだけではないのか,と.それは,無知なまま領主に支配され続けていた農民が,「わしらも人間だ」と立ち上がった百姓一揆と似ています.領主が,彼らを謀反者と呼んだように,支配者たちは,「反抗期だ!」と叫んでいるのです.どちらが正しいのか,わざわざ言うまでもありません.

【ちょっとのこと】
「よろしくお願いします.」A君はとても礼儀正しい中学3年生でした.一緒に病院へやってきた母親は,「最近,ちょっとのことでも,おこったり,あばれたりするのです」と訴えました.なぜ,あばれるのでしょうか.
 あばれる理由は簡単です.「ちょっとのこと」が,自我の芽生えはじめた彼にとっては,もう「ちょっとのこと」ではなくなっていただけのことなのです.さりとて,母親の言葉が間違っていた訳でもありません.これまで,それは本当に「ちょっとのこと」だったのです.ただ,いつから「ちょっとのこと」でなくなったのか,それに気付くのはけっして易しいことではありません.

【反抗は防御反応】
 A君の場合,激しい感情の動きがとれるまでには2カ月ほどかかりました.それは,親が,彼を自立した一人の人間として認め,信じるための時間でもありました.「知らないうちに,こんなに成長していたのですね」と,母親は最後の診察日に言いました.
 親から認め,信じられ始めた彼は,逆に,親のことを認め,信じられるように変貌していったのです.
 思春期は,これからの自分の行動様式を決めてゆく上で大切な時期です.他からの余分な干渉は,自由な行動決定を鈍らせます.思春期の無口と反抗は,自らの自然な発達を守るためには,仕方のない防御反応とも思われるのです.
 次回は,
むずかしい思春期について.