4. スポーツの害

【スポーツはからだに良くない】
 朝練と称する早朝練習が,思春期のからだには好ましくない,という前回のお話に続いて,今回は,スポーツのもつ害について触れなくてはなりません.
 過ぎたるは及ばざるが如し,とはよく言ったもので,スポーツもやり過ぎれば,からだは必ず破綻することを,もっと知ってほしいのです.

【スポーツマン・ハイ】
 運動を始めると,からだは強い緊張状態に入ります.十分な酸素がからだに行き渡るように,気管支を広げ,呼吸を速め,心臓の拍動数を上げます.また,いつでも使えるエネルギー源として,血液中の糖分のレベルを上げる,などの変化が起こります.しかし,運動の負担が大きすぎて,その緊張状態でも対応できなくなると,からだは苦痛を感じさせて,運動の中止時期がきたことを知らせます.それでも,運動を続けると,苦痛は消え,心地よく感じるようになります.いわゆる,スポーツマン・ハイといわれる状態です.運動選手は,急に楽になったことを,たいていは,「トレーニング効果が出てきた!」と勘違いします.本当は,強い緊張と苦痛から,からだを守るための反応で,運動は中止あるいは軽減しなくてはならないのです.
さらに運動を続けると.どうなるか?すぐに異変は起こりません.しかし,徐々に,本当に少しずつ,からだは傷んでゆきます.

【無気力なキャプテン】
 C君が私どもの病院を訪れたのは,昨年の9月のことでした.「何にもやる気がなくなった」と言うのです.彼は,中学2年生,バスケットボール部のキャプテンでした.異変に気付いたのは,きつい夏休みの練習も,もう終わりを迎えるころ,朝起きてもまったく疲れがとれなくなったと言います.学校が始まってからは,何にも興味がわかず,自分が敗北したような気分になってしまったのです.いろいろとお話を聞きましたが,人間関係,家庭問題などに,特に問題となるようなことはありませんでした.

【練習しすぎ症候群】
 典型的overtraining syndrome(練習しすぎ症候群)です.耐え切れない運動ストレスに対し,からだがプッツンしてしまったのです.回復しない疲れ,明るいことが考えられない精神状態を特徴とするこの病気は,進行し過ぎると,治療法もありません.早めに発見して,運動量を軽くするしかないのです.ポイントは肩.肩の落ちたスポーツ選手を見たら要注意.
 次回は,
運動性鉄欠乏症についてお話します.